母はまだ自分の足で買い物に行けるほど元気です。ただ、貧血の気もあり、特に暑い夏には今までもふらふらっとして地べたに座り込んでしまうこともありました。そのたびに周囲の人に助けてもらい、なんとか杖も無しで過ごしきたのですが、先日ある出来事があり歩行器を借りて使ってみては?という話になったのです。
突然の出来事
それは普通の火曜日の午後でした。母がいつものようにスーパーに買い物に出かけた時のことです。
電話が鳴ったのは午後3時頃。「お母さんが転んでしまって…」という近所の方からの連絡でした。慌てて言われた場所に向かうと、母は歩道の植え込みの近くで座り込んでいました。どうやら歩道の段差につまずいて、バランスを崩してしまったようです。
顔の左側が腫れ上がり、唇に擦り傷ができていました。幸い大きな怪我はありませんでしたが、その時の母の「足に力が入らなくて…」という言葉が、私の胸に重くのしかかりました。
変化への気づき
実は、この転倒事故の前から、母の歩き方に変化を感じていました。以前はしっかりとした足取りだったのに、最近は何となく頼りない感じがしていたのです。階段を上る時に手すりに頼る頻度も増えていましたし、長時間の買い物を避けるようになっていました。
でも、母も私も「年を取ればこんなものかな」と軽く考えていました。まさかこんな形で現実と向き合うことになるとは思いませんでした。
介護認定への第一歩
転倒事故の翌日、かかりつけ医の先生に相談しました。先生は母の状態を丁寧に診察した後、「介護保険の申請を検討されてはいかがでしょうか」と提案してくださいました。
正直なところ、「介護」という言葉に戸惑いました。母はまだ元気だし、一人で生活もできている。でも先生の「早めの対策が、お母さんの安全と自立を守ることになります」という言葉に背中を押されました。
申請から認定まで
市役所での申請手続きは思っていたよりもスムーズでした。担当の方が丁寧に説明してくださり、必要な書類もその場で準備できました。
約1か月後、要支援1の認定通知が届きました。ケアマネージャーさんとの面談では、母の生活スタイルや困っていることを詳しく聞いてくださいました。そして「歩行の安定性を高めるために、歩行器のレンタルはいかがでしょうか」という提案をいただきました。
歩行器なんて大げさじゃ?
福祉用具の専門店で、いくつかの歩行器を試してみました。母は最初「大げさじゃない?」と遠慮がちでしたが、実際に使ってみると「これなら安心して歩ける」と笑顔を見せてくれました。
選んだのは、軽量でコンパクトに折りたためるタイプ。買い物カゴも取り付けられるので、今まで通りスーパーでの買い物も楽しめます。月額レンタル料は1割負担で数百円。これで母の安全が確保できるなら、本当に助かります。
新しい日常
歩行器を使い始めて2週間が経ちました。母の表情が明るくなったのが何より嬉しい変化です。「転ぶかもしれない」という不安から解放されて、再び外出を楽しめるようになりました。
近所の方々も「いいものを使っているね」と声をかけてくださいます。最初は恥ずかしがっていた母も、今では「これがあると安心なの」と堂々と話しています。
学んだこと
この経験を通して学んだことがあります。それは、「介護」は決して終わりを意味するものではなく、より安全で快適な生活を続けるための手段だということです。
早めの対応が、母の自立した生活を支える結果につながりました。もし同じような状況にある方がいらしたら、遠慮せずに相談することをお勧めします。
母が元気に外を歩く姿を見ていると、あの時勇気を出して介護認定の申請をして良かったと心から思います。これからも母らしい生活を続けていけるよう、家族みんなでサポートしていきたいと思います。
介護認定や福祉用具について詳しく知りたい方は、お住まいの地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口にお気軽にご相談ください。
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