私は大手外資企業で営業を20年以上していました。50名以上の組織を持ちお客様に選ばれるにはどうすれば良いか?ということを日々学び実践してきた経験から、今日は「寄り添う接客」の重要性についてお話ししたいと思います。
介護タクシー業界は競合が増える中、技術面だけでなく「心のサービス」で差別化を図ることが、長期的な成功につながります。
なぜ「寄り添う接客」が重要なのか
介護タクシーを利用される方は、単なる「移動手段」を求めているわけではありません。対価を頂いている以上のサービスは出来ませんが、気遣ったり、心配りをしたり、寄り添ったりすることは出来ると思います。皆さんはお客様の立場に立って物考えていますか?
利用者さんの心理を理解しよう
- 不安感: 体が不自由な状態での外出への不安
- 遠慮: 人に迷惑をかけているのではという気持ち
- 孤独感: 一人で病院に行かなければならない寂しさ
- プライド: 介助を受けることへの複雑な気持ち
この心理を理解することが、真に寄り添うサービスの出発点です。ほとんどの事業者さんは自分が介護を受ける立場になったことは無いと思います。例えば、自分の介護タクシーにお客様の立場として乗車したことはあるでしょうか?
予約受付から始まる「寄り添い」
電話での第一印象が全て
❌ ダメな例
「はい、○○介護タクシーです」(事務的な対応)
「お迎え時間と行き先をお聞かせください」
✅ 良い例
「いつもご利用ありがとうございます。○○介護タクシーの△△と申します」
「今日はお電話いただき、ありがとうございます」
「どちらまでお迎えにあがらせていただきましょうか?」
最初の電話は一番大切な瞬間です。この一瞬で利用に繋がるか否かといっても過言ではありません。最初にどのような対応、口調、トーンで話すかによって人の印象は大幅に変わります。釈迦に説法だと思いますが、介護タクシーは運転が安全で早ければ良いということではありません。お客様と接するすべての瞬間 (Morment of Truth 真実の瞬間)はあなたの会社のブランドイメージを形成する瞬間でもあります。
詳細な聞き取りの重要性
- 身体の状況(車いす、歩行器使用など)
- 付き添いの有無
- 時間に余裕があるか、急いでいるか
- 特別な配慮が必要な点
- 帰りの予定時間(病院の場合は待機が必要か)
この情報収集は「事務的な確認」ではなく「安心して利用していただくための準備」だと伝えましょう。
迎車時の「寄り添う」ポイント
到着時の配慮
- 時間厳守は絶対条件(早すぎても迷惑になることがある)
- 玄関先での挨拶は明るく、でも騒がしすぎず
- 「今日はお疲れさまです」「お待たせいたしました」の一言
乗車介助での心配り
声かけの例:
「お手伝いさせていただきますね」
「痛いところはございませんか?」
「シートベルトは大丈夫でしょうか?」
「エアコンの温度はいかがですか?」
車内環境の整備
- 清潔で匂いのない車内
- 適切な温度管理
- 滑り止めマットやクッションの配置
- ティッシュや小さなゴミ袋の準備
運転中の「会話」という名の心のケア
話しかけるタイミングの見極め
利用者さんの表情や様子を見て:
- 疲れている様子 → 静かに安全運転に徹する
- 不安そうな様子 → 優しい声かけで安心感を提供
- 話したそうな様子 → 適度な会話で気分転換のお手伝い
会話のコツ
✅ 良い話題
・季節や天気の話
・地域の話(「この辺りは○○で有名ですよね」)
・交通状況の説明(「この道が一番スムーズです」)
❌ 避けるべき話題
・病気や症状について詳しく聞く
・家族の心配事を聞き出そうとする
・政治や宗教の話
・他の利用者さんの話
目的地での細やかな配慮
病院の場合
- 受付の場所まで案内できるか確認
- 帰りの時間が不明な場合の連絡方法を説明
- 「お大事になさってください」の一言
買い物の場合
- 重い荷物の運搬をお手伝い
- 店内で迷わないよう入り口で簡単な説明
- 「お疲れさまでした」「良いお買い物ができましたね」
料金収受時のマナー
金銭のやり取りでの配慮
- 料金を分かりやすく説明
- お釣りは見やすく、丁寧に手渡し
- 領収書は必ず発行
- 「ありがとうございました」の感謝の気持ちを込めて
継続利用につながる「プラスα」のサービス
定期利用の方への特別な配慮
- 利用者さんの好みや特徴を覚える
- 「今日は調子がよさそうですね」などの声かけ
- 季節の変わり目には体調への気遣い
家族への配慮
- お迎え時に家族への挨拶
- 利用後の様子を簡単に報告(プライバシーに配慮して)
- 家族の不安を和らげる安心感の提供
トラブル時こそ「寄り添い」の真価が問われる
よくあるトラブルと対応
渋滞で遅刻しそうな場合:
❌「渋滞で遅れます」
✅「申し訳ございません。あと○分ほどで到着予定です。
病院には私から連絡を入れさせていただきますが、
よろしいでしょうか?」
体調が急変した場合:
・慌てず冷静に対応
・救急車の手配が必要か判断
・家族への連絡を確認
・病院への連絡を代行
事業成功のための継続的な取り組み
スタッフ教育の重要性
- 介護の基本知識研修
- コミュニケーション研修
- 緊急時対応研修
- 定期的な振り返りミーティング
利用者さんからのフィードバック
- 満足度アンケートの実施
- 改善点の把握と対応
- 良いサービスの事例共有
地域とのつながり
- 医療機関との連携強化
- 介護施設との情報交換
- 地域包括支援センターとの協力
まとめ:「技術」×「心」が最強の組み合わせ
介護タクシー事業において、安全で確実な移動サービスを提供することは大前提です。しかし、それだけでは他社との違いを生み出せません。
利用者さんに寄り添う接客こそが:
- リピート利用につながる
- 口コミで新規顧客を呼ぶ
- スタッフのやりがいを高める
- 事業の持続的成長を支える
一人ひとりの利用者さんが抱える不安や想いに寄り添い、単なる移動手段ではなく「安心と笑顔を運ぶサービス」を提供することで、必ず事業は成功します。
明日から、いや今日から実践できる小さな心配りから始めてみませんか?利用者さんの笑顔が、きっと事業の成長につながっていくはずです。
介護タクシー事業者の皆さん、一緒に業界全体のサービス向上を目指していきましょう!
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