高齢になった親にデイサービスの利用を勧めるとき、多くの方が同じような壁にぶつかるのではないでしょうか。私の母も例外ではありませんでした。「まだそんなところに行く状況じゃない」「人と話したりするのが好きじゃない」…。そんな母が今では通所日を心待ちにしているまでの道のりを、同じような悩みを抱える方の参考になればと思い、体験談として書いてみます。
最初の壁:プライドと不安
母にデイサービスの話を切り出したとき、返ってきたのは想定していた通りの反応でした。
「まだそんなところに行く状況じゃない。自分のことは自分でできる」
「人と話したりするのが好きじゃないから、行っても楽しくない」
高齢者の多くが持つ「まだ大丈夫」という気持ちと、「知らない人との交流への不安」。これらの感情は決して否定すべきものではありません。長年培ってきたプライドや、慣れ親しんだ生活への愛着があるのは当然のことです。
説得のポイント:段階的なアプローチ
「見学だけ」という低いハードル
最初から「通う」ことを前提にすると、心理的なハードルが高くなりすぎます。そこで私が使ったのは:
「とりあえず見学だけでも行ってみよう」
この言葉のポイントは:
- 「とりあえず」という気軽さ
- 「見学だけ」という制限
- 決断を先延ばしできる安心感
「嫌だったらすぐ辞められる」という安心感
「嫌だったらすぐに辞めればいいから」
この一言で、母の表情が少し和らぎました。逃げ道があることで、心理的プレッシャーが軽減されるのです。
具体的なメリットを伝える
抽象的な「健康に良い」ではなく、具体的な魅力を伝えました:
- 「専門スタッフがいるから、体の相談もできる」
- 「送迎があるから、運転の心配がない」
- 「昼食も用意してくれるから、栄養バランスも安心」
見学当日:渋々から興味へ
見学当日、母は明らかに渋々といった様子でした。しかし、施設のスタッフの方々の温かい対応や、他の利用者さんたちの自然な笑顔を見て、少しずつ表情が変わっていくのがわかりました。
特に印象的だったのは、レクリエーションの時間です。みんなで歌を歌ったり、簡単なゲームをしたりする様子を見て、母が小さく笑っていたのを覚えています。
通い始めてからの変化
最初の数回は、迎えの車が来るたびに「本当に今日も行くのか…」という顔をしていた母。しかし、3〜4回通ったあたりから明らかに変化が現れました。
変化1:話題が増えた
「今日は○○さんが休みだったから心配になった」
「△△さんが面白いことを言って、みんなで笑った」
家での会話に、デイサービスでの出来事が頻繁に登場するようになりました。
変化2:身だしなみへの意識が向上
以前は家で過ごすことが多く、身だしなみにあまり気を遣わなくなっていた母でしたが、「明日はデイサービスだから」と言って服装を選んだり、化粧を念入りにするようになりました。私自身、これって大きな変化だと思いました。やっぱり誰かに会うということで生活にハリがでるというか、目的が出来るというかとても良いことだと思いました。それまでは日中ずーっとテレビを見ているだけの生活よりも素晴らしい環境の変化だと思います。
変化3:体調への意識が高まった
「みんなでラジオ体操をやるから、体が柔らかくなった気がする」
「歩くのが前より楽になった」
運動量が増えたことで、体調面でも良い変化を感じているようでした。普段は近くのスーパーに買い物に行く程度。だんだんと運動量も減り足腰が弱くなってしまいます。通所することで適度な運動をすることが出来て、健康な身体を維持できると思います。
現在:楽しみになったデイサービス
今では、デイサービスの日程表をカレンダーに書き込んで、「明日は行く日だよね」と嬉しそうに話しています。時には「今週はお休みが多くてつまらない」と言うことも。
あれほど嫌がっていた母が、今では通所日を心待ちにしている姿を見ると、あの時、少し無理やりだったけど勧めてよかったと心から思います。
デイサービスを嫌がる親への説得のコツ
私の経験から、以下のポイントが重要だと感じています:
1. 強制ではなく提案として
「行くべき」ではなく「行ってみない?」という姿勢で
2. 小さなステップから
見学→体験→短時間利用→通常利用という段階的なアプローチ
3. 選択権を残す
「嫌だったら辞められる」という安心感を与える
4. 具体的なメリットを伝える
抽象的な話より、実際の生活での利点を説明
5. 時間をかける
一度の説得で諦めず、時間をかけて理解を得る
6. 家族の不安も伝える
「家族としても安心できる」という気持ちも正直に話す
まとめ
高齢の親にデイサービスを勧めるのは、簡単なことではありません。しかし、親の気持ちに寄り添いながら、段階的にアプローチしていけば、きっと良い結果につながると思います。
大切なのは、親の尊厳を尊重し、強制ではなく選択の機会を提供すること。そして、一度始めてからも、親の気持ちの変化に注意深く耳を傾けることです。
今、同じような悩みを抱えている方がいらっしゃいましたら、まずは「見学だけでも」という気軽な気持ちで提案してみてください。きっと、思いもよらない良い変化が待っているかもしれません。
この体験談が、同じような状況にある方の参考になれば幸いです。親の気持ちを第一に、焦らずゆっくりと進めていくことが大切だと思います。
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