親の介護で直面した現実「どこに入居すればいいの?」
インターネットで検索すると「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「特別養護老人ホーム」「老人保健施設」など、似たような名前の施設がたくさん出てきます。「違いが分からない」「どこが母に適しているの?」と、頭の中がこんがらがってしまいました。
きっと同じような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。特に「特別養護老人ホーム」は「特養」という略称でよく耳にするものの、実際にどんな施設なのかよく分からない方が多いと思います。
今回は、そんな特別養護老人ホームについて、素人の私でも理解できるよう調べた内容を、分かりやすくお伝えしたいと思います。
そもそも特別養護老人ホーム(特養)って何?
特養の基本的な性格
特別養護老人ホームとは、在宅での生活が困難な要介護状態の高齢者が入居できる介護保険施設です。「特養」の呼称でも知られています。民間運営の有料老人ホームなどに比べて低料金な点が魅力ですが、要介護3以上の方しか入居できないなど、条件が厳しく設定されています。
簡単に言うと、特養は国や地方自治体、社会福祉法人が運営する公的な施設なんです。民間の有料老人ホームと違って、営利を目的としていないため、費用が抑えられているのが大きな特徴です。
全国にどのくらいあるの?
特別養護老人ホームは公的な介護施設にあたるため、老人福祉法によって定義付けされています。全国に8,414施設あり(令和3年10月1日現在)、介護保険施設の中で最も数が多いです。
意外に多いな、と思われるかもしれませんが、実は入居希望者に対して絶対的に施設数が足りていません。そのため「待機者」が多いのが現状です。
特養に入居するための条件とは?
基本的な入居条件
特養への入居には、厳格な条件が設けられています。主な条件は以下の通りです:
1. 年齢条件
- 原則として65歳以上
- 40歳から64歳までの方でも、特定疾病(がん、関節リウマチ、脳血管疾患など16種類)が認められれば入居可能
2. 要介護度の条件
要介護度が3以上かつ65歳以上の方。また、感染症などによる医療措置を必要としない方
これが最も重要な条件です。要介護1や2の方は原則として入居できません。ただし、特例的に要介護1・2の方でも入居が認められる場合があります。
3. 医療面の条件
- 重篤な感染症がない
- 24時間医療管理が必要でない
- 精神症状が安定している
特例で入居できるケースって?
要介護1・2でも、以下のような場合は特例として入居が認められることがあります:
- 認知症で、日常生活に支障をきたすような症状や行動が頻繁にある
- 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障をきたすような症状や行動が頻繁にある
- 深刻な虐待が疑われる等、心身の安全・安心の確保が困難
- 単身世帯や同居家族が高齢・病弱等により、家族等による支援が期待できず、地域での介護サービスや生活支援の供給も十分でない
例えば、息子さんが遠方に住んでいて、認知症の症状が進んだお父さんを一人にしておけない、といった状況では特例が適用される可能性があります。
気になる費用はどのくらい?
月額費用の目安
特養の大きな魅力の一つが、費用の安さです。一般的に月額費用は以下のような範囲になります:
個室(ユニット型)の場合
- 月額:約13万円~17万円
多床室(従来型)の場合
- 月額:約9万円~13万円
この金額には、介護サービス費、居住費、食費、日常生活費が含まれています。
有料老人ホームと比較すると?
民間の有料老人ホームの場合、入居一時金が数百万円から数千万円、月額費用も20万円から50万円程度かかることが珍しくありません。それと比較すると、特養の費用負担がいかに軽いかが分かります。
ただし、この安さゆえに人気が高く、「入りたくても入れない」という状況が生まれているのも事実です。
特養の種類について知っておこう
3つのタイプがある
地域密着型、広域型、地域サポート型の3種類があり、入居条件や特徴もさまざまです。
1. 広域型特養
- 定員30人以上の大型施設
- 都道府県が指定・監督
- 他の市町村からの入居も可能
2. 地域密着型特養
- 定員29人以下の小規模施設
- 市町村が指定・監督
- 原則として施設のある市町村の住民のみが入居可能
3. 地域サポート型特養
- 地域の在宅介護を支援する機能も持つ
- ショートステイやデイサービスも併設
居室タイプの違い
個室(ユニット型)
- 一人一人の個室
- 共同のリビングがある
- プライバシーが確保される
- 費用は若干高め
多床室(従来型)
- 4人部屋が一般的
- 費用は安い
- 他の入居者との交流が自然に生まれる
実際の入居までの流れと待機期間
申し込みから入居まで
- 市区町村の窓口で申し込み
- 要介護認定書類を持参
- 入居申込書を記入・提出
- 入居判定
- 施設による面談・審査
- 緊急性や介護度を総合的に判断
- 入居決定
- 空きが出次第、優先順位の高い方から連絡
- 入居手続き
- 契約書類の作成
- 必要書類の準備
待機期間はどのくらい?
待機期間は地域や施設ごとに大きく異なるため、申し込み時に目安を確認しておくことが大切です。
都市部では2年から5年待ちということも珍しくありません。一方、地方では比較的短期間で入居できる場合もあります。
待機期間を短くするコツ
特養へ入所する順番は、申し込み順で決まる以外に、緊急性の高さで優先されるケースもあります。要介護度が重くなって「要介護4~5」になった方や、家族等に介護者がいなくなった方は、早急な措置が必要として優先となるかもしれません。
- 複数の施設に同時申し込み
- 郊外の施設も検討する
- 状況変化があれば施設に連絡する
- 地域密着型も検討する
特養のメリット・デメリット
メリット
1. 費用が安い
入居一時金不要で、月額費用も抑えられています。
2. 24時間介護体制
夜間も職員が常駐しており、安心です。
3. 終身利用可能
基本的に生涯にわたって利用できます。
4. 介護保険の適用
費用の自己負担は1割から3割程度です。
5. 医療連携
嘱託医による定期的な診察があります。
デメリット
1. 入居待ちが長い
人気施設では数年待ちも珍しくありません。
2. 入居条件が厳しい
要介護3以上という条件があります。
3. 医療ケアに限界
重篤な医療処置は対応できない場合があります。
4. 個室が限られる
従来型では4人部屋が中心です。
5. 立地が限られる
都市部では施設数が不足しています。
特養以外の選択肢も検討しよう
特養の入居までに時間がかかる場合、他の選択肢も検討することをお勧めします。
老人保健施設(老健)
- 在宅復帰を目指すリハビリ施設
- 入居期間は原則3か月から6か月
- 要介護1から入居可能
有料老人ホーム
- 費用は高めだが、サービスが充実
- 要支援から入居可能
- 待機期間が短い
サービス付き高齢者向け住宅
- 見守りと生活相談サービスが基本
- 比較的自立度の高い方向け
- 賃貸住宅の性格が強い
グループホーム
- 認知症専門の施設
- 少人数で家庭的な雰囲気
- 要支援2から入居可能
まとめ:特養選びで大切なこと
特別養護老人ホームは、費用面での負担が軽く、終身利用可能な優れた施設です。しかし、入居条件が厳しく、待機期間が長いという課題もあります。
施設選びで大切なポイント
- 早めの情報収集と申し込み
要介護度が軽いうちから情報を集め始めましょう。 - 複数の選択肢を用意
特養だけでなく、他の施設タイプも検討しておきましょう。 - 地域を広げて検索
住み慣れた地域にこだわりすぎず、郊外の施設も視野に入れましょう。 - 定期的な状況確認
申し込み後も施設との連絡を取り、状況変化を伝えましょう。 - 見学は必須
実際に施設を見学して、雰囲気やケアの質を確認しましょう。
私自身、母の施設探しを通じて学んだことは、「完璧な施設はない」ということです。費用、立地、サービス内容、入居のしやすさなど、何を優先するかを家族でよく話し合うことが大切だと感じました。
特養は確かに魅力的な選択肢の一つですが、それだけに固執せず、その人にとって最適な環境を見つけることが何より重要だと思います。
介護は長期戦です。焦らず、じっくりと情報を集めて、納得できる選択をしていきましょう。同じような状況にある皆さんの参考になれば幸いです。
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